「ドラゴン?」
じいさんにおんぶされ無邪気な笑顔で言ったローの一言にウラはため息をついた。
「じいさん、この様子だとローはサンタも信じてるんだろうな。まぁ可愛いもんだけど」
ローは首を傾げた。
「じーじ、サンタクルスおじさんの事?」
じいさんも首を傾げた。どうやらこの世界にはサンタはいないようだ。
そんなたわいもない話をしていると街の近くに来たのか所々で人を見かけるようになった。
とくに変わった所は無い普通の人間ばかりだな…。
まぁ変わったやつと言えば狼のかぶりもの被ったやつくらいか。仮装大会でもあるのか…?
「じーじ、またワンワンだ。」
ローも可愛いもんだな。どうせあれは被りものなのに…
「ワンワンじゃないぞ。あれはウルフ族じゃ。そうかローは初めてか」
ウラはじいさんの一言でゴクリと生唾を飲んだ。
まさか…
だがよくよく見てみると毛並みといい目の感じといいリアル過ぎる被りものだった。
「おい、ガキ。さっきから何ジロジロ見てんだ!」
ウラの視線に気づき1匹の?1人の?ウルフ族が近づいてきた。
するとウラは突然ウルフ族の首部分にあると思われる被りものの端っこを掴んだ。
え?無い?
「な、何しやがんだガキ!」
ウルフ族は驚きウラを突き飛ばした。
「な、無い…無い、端っこが無い…いや、もしかしたら背中にチャック系か…いやでも…」
ウラはショックのあまり無表情で何かつぶやき始めた。
「…な、何だ?このガキ…気持ち悪」
ウルフ族は関わりたくないといった様子でその場から去っていった。
それを見ていたじいさんはウラの肩を叩いて耳元でつぶやいた。
「これで分かったじゃろ?」
じいさんはニヤリとした。
「分かったじゃろー」
ローもじいさんの真似をしてキャッキャと騒いでいた。その笑い声がなんとも不気味だった。