空色ドロップ。

波。  2006-05-07投稿
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空に手を伸ばした。
届かない。

手をひっこめた瞬間、
届きそうな気がした。

* * * *

夕暮れ。
茜色に染まる坂道。
細く長く、伸びる影。
ひとつぼっちのそれに、不意に目頭が熱くなった。

仄かなオレンジ色の光が、
いつかの記憶をつれてくる。

あれは、
そう。

まだ、
彼がいて、
手を繋いで、
ただ、笑い会えてた頃。


不器用だった、
感情表現が、上手く出来なくて、
人と関わることが苦手で、
いつもひとりぼっちの私の手を引いてくれたのが、彼だった。

懐っこくて、
やさしくて、
温かくて。

いつか、
どうして、私なんかにかまうのって聞いたら、
独りはつまらないでしょって、笑って言ってた。
でも、その後、ふと心配そうな顔で、
俺と一緒はつまらない?って、言うから、
男の人なのに、可愛らしいなんて思ってしまったのも、覚えてる。


不意に、涙目。
ため息。

―ねぇ、
 そっちの世界はどうですか?

 こっちは、春が来て、陽気なはずなのに、
 アナタがいないから、なんだか寂しいんです。
 

見上げた、この空に、
彼がいたらいいな。
なんて。



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