別の世界。
パイロットの感なのか本能がそう言っているのか。
今飛んでいる空に異様な違和感を感じたフリッツはホバリングのできるF25で超低空、超低速でこの異様な世界を這い回った。
「あれは…街か?」
フリッツの視線の先には岩肌の目立つ山脈地帯には似つかわしく一つだけ飛び抜けて高い高層ビルが立っていた。その下にもポツポツと大小様々な建物が立っている。
米国最新鋭の戦闘機F25はいわば機密情報の塊、うかつに見知らぬ土地に降り立つのはあまり乗り気ではないが今はそんなことを言っている場合ではない。
燃料の残量も気になる。
どちらにしろこのままずっと空を飛んでいるわけにはいかないのだ。
フリッツは街から少し離れた森の中にF25を着陸させ歩いて街に向かうことにした。
40分ほど歩くと前方にちらほらと建物らしきものが見え始め人々が街を出入りしているのが分かる距離まで来た。
フリッツは岩陰に隠れて建物や人々の様子をしばらく観察する事にした。
…どこの国だ?白人も黒人もいる…アメリカじゃないのか?
人々は肌の白い者黒い者、目の青い者いろいろいるが特に変わったところは無い。ただ変わっているのはその服装くらいだ。
フリッツは更に観察を続けようと身を乗り出した。
だが左肩に何かが当たってそれを邪魔をしている。
木の枝でも当たっているのか…?
フリッツはそう思い右腕で振り払おうと左肩に当たる何かに触れた瞬間とっさに何かを感じた。
フリッツは腰に下げていた銃を抜き勢いよく振り返る。
フリッツが感じたのは細い木の枝などではなくその形、温もりから確実に人の手だと確信したのだった。
「動くな…!」
フリッツは銃を構えたままその手の主を睨みつけた。
「す、すみません…!撃たないでください……」
そこに立っていたのはブロンドの白人系の少女だった。
その少女はフリッツのあまりの迫力に今にも泣き出しそうに震えていた。
白人の少女?どこの国だ?やはり服装は俺たちとはどこか違う…
フリッツは震える少女の姿を見てもう1つ違うことに気づいた。
背中に……白い……翼…?