奈央と出会えたから。<144>

麻呂  2008-05-07投稿
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* * * * * *

『聖人。もう、ここでいいよ。ここからお母さんの働いているお弁当屋さん、直ぐ近くだから。』



『そっか。分かった。ゴホッ‥ゴホッ‥‥。』



『聖人‥風邪?!』


『あぁ。俺、元々喘息持ちだし。』



『あんまり無理しないでね。』



『おぅ。サンキュ。じゃなっ!!』



そう言ってあたしに背を向け歩き出した聖人に、



『聖人!!』



あたしは、つい呼び止めてしまったんだ。





『どうした?!』



直ぐ様、くるっと振り向いてくれた聖人に、



あたしは思わず抱き付いてしまった―\r



自分でも信じられない位に大胆に―\r



周りに人がいるかどうかを確認する事もせず―\r



ただ―\r



そうせずにいられない衝動に駆られた―\r


自分でもどうしようもない位に愛おしくて―\r



目の前の大好きな人の胸に飛び込んだ―\r




『奈‥‥央‥???』



長身の聖人に抱き付いたら―\r



チビのあたしには顔は見えない―\r





『聖人は全然分かってない!!

もっと自分を大切にしてよ!!

もっと自分の体の事気にしてよ!!

気管支だって‥‥

心臓だって‥‥


悲鳴を上げてるよ!!

ちゃんと病院へ行って欲しいの!!

煙草だって‥よくないんだから!!』





今まで幾度となく聖人にぶつけたあたしの言葉は―\r



何時も空回りしてばかりで―\r



あなたは何時も半信半疑にあたしの言葉を聞き流していたよね―\r



今まで幾度となく聖人にぶつけたあたしの感情は―\r



何時も行き場を失い―\r



あなたに何時も優しいキスであたしの言葉は、はぐらかされていたよね―\r





今日のあたしは何か何時もと違った―\r



こんなに感情の赴くままに、聖人にぶつかったのは―\r



きっと―\r



付き合い始めてから初めての事だった―

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