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『聖人。もう、ここでいいよ。ここからお母さんの働いているお弁当屋さん、直ぐ近くだから。』
『そっか。分かった。ゴホッ‥ゴホッ‥‥。』
『聖人‥風邪?!』
『あぁ。俺、元々喘息持ちだし。』
『あんまり無理しないでね。』
『おぅ。サンキュ。じゃなっ!!』
そう言ってあたしに背を向け歩き出した聖人に、
『聖人!!』
あたしは、つい呼び止めてしまったんだ。
『どうした?!』
直ぐ様、くるっと振り向いてくれた聖人に、
あたしは思わず抱き付いてしまった―\r
自分でも信じられない位に大胆に―\r
周りに人がいるかどうかを確認する事もせず―\r
ただ―\r
そうせずにいられない衝動に駆られた―\r
自分でもどうしようもない位に愛おしくて―\r
目の前の大好きな人の胸に飛び込んだ―\r
『奈‥‥央‥???』
長身の聖人に抱き付いたら―\r
チビのあたしには顔は見えない―\r
『聖人は全然分かってない!!
もっと自分を大切にしてよ!!
もっと自分の体の事気にしてよ!!
気管支だって‥‥
心臓だって‥‥
悲鳴を上げてるよ!!
ちゃんと病院へ行って欲しいの!!
煙草だって‥よくないんだから!!』
今まで幾度となく聖人にぶつけたあたしの言葉は―\r
何時も空回りしてばかりで―\r
あなたは何時も半信半疑にあたしの言葉を聞き流していたよね―\r
今まで幾度となく聖人にぶつけたあたしの感情は―\r
何時も行き場を失い―\r
あなたに何時も優しいキスであたしの言葉は、はぐらかされていたよね―\r
今日のあたしは何か何時もと違った―\r
こんなに感情の赴くままに、聖人にぶつかったのは―\r
きっと―\r
付き合い始めてから初めての事だった―