人は死ぬ。病気。事故。他殺。自殺。酷いところへ行くと飢えや渇きで死ぬものも居る。戦争やテロで死ぬものも。……人間、天寿を全うすることがこんなにも難しいだなんて、一体誰が予想し得ただろうか。神様なんかもきっと知らなかったに違いない。
とまれ、幸いなことにこの国は平和なので、後者四つで命を落とすものは少ないだろう。良い事だ。だとすれば、人が死ぬ原因なんかは限られてくるものだ。
前者四つ。例えばどんな、と問うなら、俺の身近な例を挙げてみようか。病気。祖母は肺ガンが全身に転移して苦痛の中で命を落とした。事故。父は会社帰りにトラックに衝突されてミンチになった。ちなみに、そのトラックは飲酒運転だったらしい。至極、どうでもいいことだ。
他殺。幼少の頃……と言っても小学校低学年位か。自宅に乗り込んで来た見知らぬ誰かに、祖母、父、俺を除く全員が鋭い刃物で切り裂かれて、ボロ雑巾のようになって死んだ。祖父も、母も、まだ幼い弟まで死んだ。第一発見者は俺。外で思う存分サッカーを楽しんでいた俺は、夕飯の献立に期待を膨らませながら帰宅し、その光景に立ち会った。にも拘わらず、浮かんだ思考は『今日の夕飯どうしよう』という、いかんともしがたいものであったが。
さて、残るは自殺、ではあるが。生憎と俺の家族及び親戚連中には自殺者などいない。誇ってもいい精神の健常さだ。
だから、か。身近な例と言えば、今現在通話中となっている携帯の向こうの人間、ということになる――
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