志望校に落ちた。
その結果滑り止めの、志望校とは偏差値の桁が一つ違うくらいの高校に希美(ノゾミ)は入学を余儀なくされた。
「あなた…今は希美、そっとしてやってください」
部屋の外で足音が止まって、また引き返す音がした。
―なんなの…!あれだけ家族で盛り上げといて、落ちたら私、もう用無しじゃん!―\r
悔しいやら悲しいやら、高校は友達と別々になったやらで涙は止まることはなかった。
そうこうしている内にすぐ入学式の日になった。
もう希美は決意を固めていた。
どうせやるならこの学校で成績トップになって、少しでも両親を見返すと。
新しい教室は、卒業生たちの仕業だろうか、机や壁は落書きだらけ、ヒビも入っている。
床はまったく掃除されていないし、黒板は少し白くかすんでいる。
希美は最低な教室だと思ったが、どのクラスも似たような状態だった。
まず勉強に集中出来る環境作りが必要だと、希美の決意は断固として揺るがなかった。
とにかくわけのわからない輩とは付き合わない。
伊達の黒縁メガネで肩までで切りそろえてある黒髪。
―完全なガリベン女。
これなら男女まとめて近寄ってこないはず。―\r
「朝海希美(アサウミ ノゾミ)さん」
出席がとられたが、希美はここでどうしても引き下がれないことに気づいた。
「あの、アサミです、アサミ・ノゾミです…!」
「あー。ごめんごめん、これでアサミって読むんだね」
初老の担任はその後もマイペースに出席をとり続けた。
「続いてこれから一年、誰かに学級委員長をやってもらいたいんだが…男女で分かれて候補を一人決めてくれ」
まさか希美は自分に白羽の矢が立つとは思ってもみなかった。
「さっき名前間違えられた時、朝海さん迷わず発言したからね〜」
「あの元気はウチらには無いよねー」
―ウソ…!私は勉強だけに専念したいのに!―\r
「私はそんなつもりは…!」