その後のセリフは先生の
「候補者は前に出てきて」
という問答無用の命令により、かき消された。
元気の良い男子が副委員長、希美は入学初日にして学級委員長に躍り出たのだった。
その日の放課後、体育館裏で希美は泣いていた。
「なによ…このワケわかんない人生…私は勉強が出来ればそれで良いのにぃ…!」
不意に背中にドンと衝撃を受け、膝を抱えて座っていた希美は前につんのめった。
「っ!…っいた!」
「キミ誰?」
謝りもしない男は、希美が寄りかかっていた物置小屋から出てきた。
「…!?」
「写真部に入りたいの?」
「なに言ってるんですか!?勝手に寄りかかってたのは謝ります…けど…?あの?」
はっとして希美は伊達メガネを取り出し顔を隠した。
泣いていたのをすっかり忘れていた。
「……キミ」
「…なんですか?」
「カワイイ」
「!!?」
希美は相手の顔もろくに見れないが、ビンタしたくなった。
ただでさえ機嫌が悪いというのに。
侮辱にしか聞こえない。
そのとき突然優しく顔を両手で包まれ、希美は思わず男の意のままに顔を上げてしまった。
―カッコい…いかも。―\r
どう見ても年上。
ボサボサの髪がだらしなさそうな印象だが、顔立ちは良い。
しばらく見つめ合って、希美は顔を背けた。
「…やめて!!!」
「ごめん、キミ泣いてるの?」
―今さらですか!―\r
また怒りが帰ってきた。
希美は一刻も早く立ち去ろうと思ったが、そのまま男に引っ張られ「部室」と書かれた物置小屋に招かれた。