見かけとは正反対の清潔さ。
物置小屋だったものをこの人が掃除したのだろうか。
「守山アキ(カミヤマ アキ)」
「え?」
「俺の名前、アキでいいから」
「あ…朝海希美です」
「年上だけど留年してるから学年は一緒だと思う。新一年生でしょ?見かけないから」
「はい…あの、写真部に入りたいわけでは…」
「ごめん、ごめん。でもあんなとこで泣いてたら危ない先輩たちに捕まるよ」
いつのまにやらこの男のペースに希美ははまっていた。
「はい、キレイに洗ってあるから」
アキの手にはハンカチがあった。
「すみません」
「なんかあった?愚痴ならいくらでも聞くよ」
カメラの整備を始めながらアキは促した。
希美はスッと力が抜けた気がして、アキに志望校不合格から今日の学級委員長になるまでを簡潔に話した。
「ははは!とんだ入学初日だな!…あ…ごめんごめん」
笑われたのにあまり悪い気はしない。
アキはあくまでカメラをいじっている。
「ふぅ…なんかアキさんに話せたらスッキリしました。ありがとうございます」
「いいよいいよ、俺なら放課後いつもここにいるから、気が向いたらおいで」
と同時にカメラの作業も出来上がったらしい。
「そうだな…代わりに一枚、撮らせてくれないかな」
「わ、わたしが!?無理ですよ無理!こんなブス…」
「ウソついてもさっき素顔見ちゃったんだけど」
苦笑いでアキはカメラにフィルムを入れた。
「………よし。希美さん、一枚、ダメかな?」
話をここまで聞いてくれたお礼なら仕方ない。
「………………わかりました」