「メガネ、はずしていいよ」
緊張した面もちで希美は机にメガネを置いた。
コトッ
と、メガネを置く音がしてアキが希美を見ると先ほど一瞬だけ見た、ありのままの希美が立っていた。
「窓際の、夕陽のとこに立って…そうそう、その机に腰掛けて」
―心臓がドクドク言ってる。
緊張し過ぎだよ私…―\r
希美と同じようにアキも緊張していた。
夕陽が黒髪を照らしている。
まだ希美の瞳が涙で潤んでいるので、陽の光が当たってキラキラする。
―こんな被写体今まで見たこと無い…―\r
「もう少し楽にしていいよ…頭傾けて…よし、いい感じ。撮るよ」
そう言われ希美は少し身構えた。
「希美さん…俺さ、留年して良かった」
「どうして?」
「こんなキレイな人とおんなじ学年になれたから」
お世辞の下手さに思わず笑ってしまった。
その瞬間。
カメラのシャッターが降りた。
「あ…」
「はい、終わり」
希美は何か、憑き物でも祓われたかのような、奇妙な清爽感に浸っていた。
そしてこの部室の前で泣いていた時からは想像もつかない言葉を口にした。
「また……また来てもいいですか?」
「うん、放課後にいつでも待ってる」
アキの優しい瞳を十分見つめ、希美は家路についた。