教務室にアキは呼び出されていた。
「さすがにね〜部員がキミ一人じゃいくら本格的とはいえ…」
「今月いっぱいであと一人でも入れば、部活としては成り立つけどね〜」
アキの写真好きについていく者は誰一人いなかった。
アキはアキで被写体が一人でもいてくれれば準備や撮影、現像も焼き増しも自分で出来た。
教務室を出たすぐ目の前に希美はいた。
「あ!いた!」
「あ!いた!」
二人は同時に言ったが、アキが素早く希美を教務室に連れて行き、写真部部員として紹介してしまった。
帰り際、希美は猛反発した。
「なんてことするんですか!?無理やりにもほどがありますよ!あと部室にメガネ忘れたんで鍵、開けてください!」
部室についても抗議は収まらない。
「ごめんごめん、だけど希美さんには被写体になってもらえば十分だから」
メガネを受け取ったとき不意に二人の手が触れた。
「あ」
メガネが落ち、アキは急いで拾った。
「っと、ごめん」
取り落としたメガネを昨日と違うハンカチで拭いて、アキは再び希美に返した。
「ども…あのハンカチ、ありがとうございました」
実はハンカチの中に希美は自分のメールアドレスを書いた紙を入れていた。
「ああ、わざわざありがと。そうだ、昨日の写真だけど明日には現像するからもうちょっと待っててな」
「あ!はい!楽しみにしてます!」
アキは笑って「一時間目に遅れる」からと走り去った。
「ダメだな〜今ひとつ言いたいことが言えない…」
メルアドも入ってますと、一言言いたかっただけなのだが希美はことごとく言いそびれた。