「ねえ、一週間の歌…知ってる?」
「ん?…知らない」
悠子と話した最後の会話だった。仕事で疲れていた俺は、枕元で囁く悠子の問い掛けに、適当な返事をして眠りに着いてしまった。
そして翌朝、目を覚ますと悠子の姿は無く、悠子のバッグもテーブルの上に置いたままになっていた。
早朝から仕事が入ってると言ってたから慌てて出掛けたのだろうと気にとめなかったが、その日の夜、悠子は変死体で発見された。
そして今、悠子は荼毘に付されようとしている。しかし、哀しみの感情が湧いてこない。
棺の中にあるその抜殻は、あまりにも悠子と掛け離れているからだ。親族や恋人である俺以外には見せられないほどに。
悠子はあの夜、何故あんな事を聞いてきたのか。全ての鍵は「一週間」という歌に有りそうだ。
「悠子…」
燃え盛る炎へと、棺はゆっくりと消えていった。