すぐに夏休みになった。
あの日以来中間テストまでは勉強にも集中出来た。
一週間まるまるを写真の海の近くで泊まって過ごす。
旅費は彼がもつと言ってきなかった。
新幹線で2時間半。
その間希美はじっとアキを見つめていた。
果たしてアキは人間として希美を見ているのか、被写体としてしか見ていないのか。
「希美…さん?どしたのさっきから」
「呼び捨てで。私もアキって呼びますから」
「え?ああ、うん」
再び新幹線の窓に顔を背けアキは黙った。
目的地についたのは午後をすっかり回った頃だった。
新幹線から駅発のバスに乗り換え、辿り着いた場所は周りに何もない山道入り口だった。
「ちょっと下ってすぐだよ」
思えば中学3年から勉強漬けで旅行なんてしていなかった。
少し茂った森を緩い下り坂の続くまま下りていく。
一瞬、光が漏れたと思ったら目の前には太陽を飲み込み始めた360゜の海が広がっていた。
「ウソ……」
「正規のルートじゃないけど、綺麗だろ?ちゃんと下りれる。こっちにもう少し下れる坂があるから」
希美は砂浜に裸足で降り立つとあまりの熱さに海に走ってしまった。
「っつぅ!熱い〜」
「はははは!当たり前だろ、大丈夫か?」
アキはシートを敷いたあと希美にビーチサンダルを差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう、あ!」
波で足をさらわれ私服のまま二人は海に倒れ込んだ。