恵斗(ケイト)と同棲したのは、丁度今頃の季節だった。
まだ肌寒い4月。
上京して、憧れてたアパレル企業に就職したものの、華やかな世界とは一片。
地味で、想像以上にハードな仕事内容に悪戦苦闘していた。
それでも、慣れてしまえば楽な物で、新しいこの場所で友達も彼氏も出来た。
何も不満が無い程に、私の人生は順調そのもので、東京の町並は輝いて見えていたけど、何だか寂しかった。
いくらその時の彼氏が「愛してる」何て囁いたって、私にその"愛"は伝わらなくて、私はまた次の"愛"を求めて彷徨っていた。
あの時は「本当の愛」に餓えていたんだ。
意味の無いおままごとの様な恋愛を幾度と繰り返しては、誰かを傷付けた。
そんな私に、救いの手を差し伸べてくれたのが恵斗だ。
恵斗は、今までのどの男よりも最高にムカつく奴だった。
大抵の男が私のワガママに黙って答えてくれる中、恵斗は私に一喝「ふざけんな」と。
大抵の男が私の外見だけを見てる中、恵斗はちゃんと私の中身を見てくれた。
大抵の男が私の事を「強い女」と言った中、恵斗は私の弱さを知っていた。
寂しい時は、一晩中側にいてくれた。辛い時はそっと肩を抱いてくれた。
そんな恵斗となら「本当の愛」を育めると思った。
「俺んトコ来いよ。」
そう言ってくれた日から、私はもう寂しくはなかった。
あの日から今日で、同じ季節が3回巡った。
あの頃と今とでは状況が変った。やっと見つけた「愛」は今では「情」に変って、お互い何に意識することもなく、馴れ合いの毎日になった。
何か違うと感じつつも、この楽な関係と情が邪魔して、私 達はダラダラと先の見えないゲームを続けていた。
男と女
と言うよりは
家族
の様な存在。
もうお互い飽き飽きしている事は感じていた。
SEXだってもう何ヵ月もしていない。