……あじい。
季節は夏。
じりじりと焼ける様な日差しがシャツから露出された肌を焼き付けてくる。
みーん、みーん。
耳を澄ませばセミの声。
右を向けば、めんそーれの看板をさげた観光局が作った間抜け面のシーサーの像。
左を向けば、コバルトブルーに輝く広大な海と、星屑をちりばめた様な砂浜。
「ここは、どこだ?」
……じゃなかった。
危うく暑さで頭をやられる所だった。
ここは……沖縄だ。
……暑い。
進行方向にある、無駄にどでかいシーサーの置物に俺は体を預けるようにして、もたれかかった。
生まれも育ちも沖縄の俺だが、いかんせん夏の暑さだけには耐性がない。
「太陽の罪と罰……あばよペルソナ」
目を細めながら、さんさんと降り注ぐ太陽を見つめて俺は呟く。
……駄目だ。また暑さに頭をやられてる。
意味不明じゃないか。
はぁ、と溜息一つ。
遮るものなどなく降り注ぐ太陽の日差しを一身に受けながら俺はシーサーの頭をいじくり回す。
「おら、俺はシーサー様だ。悪い子はいねーか?食っちまうどー」
俺は子供かっ!
またまた暑さで頭をやられる所だった。
おまけに一人で、んな事やってる俺は周りから見たら只の『イタイ人』じゃないか。
シーサーにもたれ掛かりながら、俺は前方の海を見渡す。
終わりなどないように広がる一新の蒼。
一直線に伸びる太陽の光りを反射して、美しく輝く海。
昔、ばあちゃんが言ってた。
美しい海……それは『美ら海』だって。
いつか、俺もあの海の向こうに行くことが出来るだろうか?
この島から、しがらみや鎖を全て断ち切って……。
俺は息を大きく吸い込むと、小さくゆっくりと吐いた。
行けるよな……美ら海の向こうへ。
〜〜この物語は借金と言う鎖に繋がれた自由に憧れる青年と、残された余命を沖縄で過ごす為にやってきた女性とのひと夏だけの恋物語。
その夏、青年は『愛』を知り、女性は『夏』を知る。
そして二人は、『美ら海』を望む。