「部屋も一緒ですか」
言われた通りの部屋に戻ったが、そこにはカメラを手入れしているアキがいた。
「安上がりだからな」
部屋から見える海には目もくれず希美はバッグから数学の教科書や問題集を取り出し始めた。
「なに、勉強するの?」
「一週間あれば結構勉強出来ますよ」
あまり関心を示さずアキはカメラ手入れに戻った。
しばらくは二人とも沈黙していた。
カメラ手入れが一段落するとアキが切り出した。
「目指してる大学とかあるの?」
「……いえ」
「そっか……」
希美は一瞬考えた。
じゃあ何のために勉強しているのかと。
そして追い打ちをかけるようにアキが言った。
「勉強、好きなのか」
「好きじゃないですけど頑張れること私にはこれしかないですから!!!」
希美は自分の発した大声に驚いた。
「あ……悪かったよ」
「いえ…すみません。ちょっと今日は先に休みますね」
希美は襖を開け、隣の部屋へ消えた。