カメラと黒髪 #14

 2008-05-11投稿
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砂粒をサラサラこぼすような微かな雨音で希美は目を覚ました。

ある程度身だしなみを整え、アキが寝ているのであろう隣室への襖を開けると、既にアキは起床しており、憂鬱そうな目で外を眺めていた。
窓際の椅子に膝を抱いて座っていた。

「天気のこと、気にしてなかったんですね」

希美の声にアキは少し驚いたように反応した。

「希美、お早う」

「お早うございます」

「参ったよ…フラッシュより陽の光で撮りたかったんだけど」

「残念でしたね…。あ、お茶淹れますね」

しばらく窓際の席でお茶を呑んでいると、アキが唐突に言った。

「昨日はごめんな」

「謝るのは私の方です。両親を見返そうとしてて」

「ああ、そういうことだったのか」

「自分でも虚しいって分かってるんです。それでも私にはこれしかないんですよね」

アキが窓に目を移し静かに言った。

「いや、虚しくはないよ。むしろ投げ出してないってエライと思うけどね。俺は」

「そんな」

「あ〜あ、希美みたいに勉強してれば留年しなかったかな」

希美は笑ってしまったが、アキの言葉はとても有り難いものだった。

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