小学校一年生の時の僕の淡い初恋。
その相手がこの、エリカちゃんだ。
“バッカ未來!!”
その、僕の名前を呼ぶ時の少し舌っ足らずなところが、昔の彼女のままだった。
『やっと思い出してくれた?!未來から見て、あたし、そんなに変わった?!』
彼女は淡々と話しながらも、道行く人に、笑顔でティッシュを配り続ける。
『女の子って、随分と変わるんだね。
ごめん。僕、さっきのオーディション会場で、君に“しょんべん小僧!!”って呼ばれた時も、全然気が付かなくて。』
『今だって途中までは全然気付いて無かったじゃん。』
彼女はそう言って僕の方を向き、クスッって笑った。
『ところで君は、何故此処でティッシュ配りなんかしているの?!
オーディション会場でビデオの撮影をしていたんじゃ‥‥。』
『オーディションは、もうとっくに終わったわよ。
今は違う仕事の取材をしていて、とあるホームレスの現場の特集をするの。
ホームレスの方達に、どうやって生計を立てているのかという取材をしたところ、
こうやって、派遣登録した会社から単発の仕事をもらって働いている方々が殆どなんだって。』
『君の仕事はADだよね?!』
『そうだよ。未來、よく知ってんじゃん。』
十七年ぶりに再会した、目の前の初恋の人は、
外見こそ、美しい女性に成長していたが、
中身の性格は、遠い昔のあの時のままに見えたけれど―\r
『あたしさ、本当はこの仕事が自分には向いてないんじゃないかって、最近よく思うんだ。』
ふと漏らした弱気な言葉が、僕の知らない十七年間を物語っていた。