武士になりたくて3

けい  2008-05-12投稿
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「裏山に逃げよう」

小一郎の声が震える。

村のすぐ傍に小高い山がある。その山を越えて左に行けば堺の町、右に行けば京の都がある。
母とねと虎之助と小一郎の三人は裏口へ、兵士達に見付からずに裏山に向かう事ができた。
しかし、途中兵士に見つかってしまった。

「捕らえろ!」

三人は無我夢中で走った。足が早い虎之助、少し遅れて小一郎、さらに遅れて母とね、あと少しで裏山に入れる所でとねが石に躓いた。
虎之助は振り返った。

「母ちゃん!」

心配して駆け寄ろうとしたがとねは
「母ちゃんの事はいい!小一郎連れて早く山に…」
虎之助に向かって怒鳴った。
すぐ傍に兵士が槍を翳しながら走って来ている。
虎之助は、唇を引き結び、山へ向かって全力で走った。途中小一郎の足が縺れ何度か転びそうになったが、構わず夢中で走った。
後ろは振り向かず走った。
とにかく走りに走った。
小一郎の手が、強く握り返してくる。

死にとうない!
死んで…たまるか!

山の頂上付近まで来た時、ふと後ろを振り返った。とねも兵士もいない。

村が燃えている。
オラ達の村が何もかも。

虎之助は静かに佇んでいた…。



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