子供の頃には見えていた。それが当たり前だったから…
話し相手にもなっていた。返事もしないそいつだったから、会話は成立していたかどうかは不明だが…。
小学校の頃、お歌がうまく歌えない日があった。
りくるさんは目の前で綺麗に歌ってくれた。
「りくるさんみたいになりたい」って言った。
中学校の頃、バスケの試合で惨敗した時があった。
りくるさんは身軽にジャンプして見せた。
「りくるさんになりたい」って言った。
親にも紹介したことはあった。
親に叱られた。
友達にも紹介したことはあった。
友達にいじめられた。
りくるさんは笑って頭を撫でてくれた。
「もう僕はいやだ」って言った。
ある日りくるさんが「君と一緒に遊ぶためのものが欲しい」と言った。
ボールを渡しても手がないからうまくさわれない。
かけっこしようとしても足がないからうまく走れない。
「しばらく慣れるまで貸してほしい」
意味が分からないが僕は「うん」って言った。
だから僕が今はりくるさん。
君のために慰めてあげるね。