今、思えば俺はキョンから愛情を貰い、教わり、人をここまで好きになれる気持ちをすでに知っていたのかもしれない。
知っていながら知らないふりをしていただけかもしれない。
そして今。
俺はこの机に座っている。こうして皆に俺の過去を、携帯から始まった恋愛話を電波を通じて送信している。苦いコーヒーをすすりながら…。
あぁ、そうだ。あの続き、まだ書いてなかったっけ
ピンポーン
「はーい」
ガチャガチャ
「新聞なら間に合っ…」
「!?」
『嘘ついちゃった。ごめんね。でもあの時とおあいこでしょ?』
「え?えー!」
『航空券、前に送ってくれたでしょ?それに書いてあった住所を辿って来たの』
「え?仕事は?」
『もういいの』
「もういいのって、なんでまた?」
『踏ん切りがついたからかな』
「とりあえず上がって」
『お邪魔しまぁーす』
「まぁ、好きなとこに座って」
『以外と片付いてるんだねぇ』
ガサガサ
「ガサ入れはやめてね↓↓」
『あっごめんごめん↓↓』
キョロキョロ
「まぁコーヒーをどうぞ」
『ありがとう』
「辞めてきちゃったの?」
『そう、秋のスケジュール全部終わったから。』
「そうか」
…
……
………
「じゃあ」
『ん?』
「…結婚……しよっか」
…
……
………
「…あれ?あらららら、な、泣くなよぉ↓↓」
『大事にしてくれる?』
「もちろん、ずっと一緒だよ」
『よろしくお願いします』
「はい、こちらこそ」
『ちなみにね』
「ん?」
『荷物なんだけど』
「今度は一人じゃなくて二人で東京に戻ろう」
『うん!』
俺の物語はこれで終わりだ。
人それぞれの出会いがあって、人それぞれの思い出がある。思い出は過去だ。人は時の流れと共に前に進んでいくしかない。未来は誰にもわからないが今、この瞬間を大事にすれば嫌な事もいい思い出に切り替わるだろう。
『ソウキューウo(^-^)o。何してるの?』
後ろから抱きしめる妻と携帯を慌てて隠す俺。
「わかった。眠いんでしょ?」
『当たりぃー』
「先に布団に入ってて」
『はぁい』
ではみなさん楽しいこの瞬間を。
『まだぁ?』
「わかったわかった、今行くよ、キョン…」