しばらく二人はその場に佇んでいた。
喉が痛い…火の粉で焼けたな。
都合のいいことに、せせらぎが聞こえる。二人はよろめきながら、小川へと足を運んだ。
気の済むまで冷たい水を飲み干し、虚ろな目をした小一郎を窺う。
虎之助は笹に包まれた握り飯を小一郎に手渡した…これぐらいしかしてやれない自分が情けない。
空腹は感じなかったが、とねが作った握り飯を食べはじめ、気付いた時にはガツガツと口に突っ込んでいた。
握り飯を食べながら、ふと小一郎を見ると顔を真っ赤にし、今にも泣きそうだった。
虎之助が、無理矢理に笑みを浮かべながら言った。
「母ちゃんが作った握り飯は美味しいな」
すると小一郎が声を詰まらせながら
「うん、…うまい…母ちゃんの握り飯は、一番うまい」
ぐいっと涙を拭く。
虎之助も、母の事を思うと涙が出そうになる。
しかし兄である自分が泣く訳にはいかない、唇を噛み締め必死に我慢した。