「希美が頑張って勉強してること、俺はわかってるから」
アキが希美の頭を軽くポンポン叩いた。
「アキ」
希美なんだか嬉しさを通り越してありがたかった。
この世に自分がやっている虚しいことを見ていてくれる人がいる。
「必ず希美がやったこと、報われるから」
「言い切れます?」
「報われなかったら俺に八つ当たりしていいよ」
希美はアキを抱きしめて泣いた。
恐らく受験に落ちてからまだ流したことがないくらい涙を流し続けた。
アキは驚いたが、希美の背中を軽く叩いて慰めた。
「ありがとう…アキ」
「あ」
不意にアキは立ち上がって、カメラ手に戻ってきた。
「え?」
「俺が伝えたかった事」
「ありがとう?」
「もっかい」
希美は涙が流れるのも構わず最高の笑顔で言った。
「ありがとう、アキ」
「こちらこそ」
しかしまだシャッターは降りない。
「……希美」
希美は不思議そうにアキを見た。
アキはレンズを軽く拭いて、意を決した。
「大好きだ」
希美から嬉し涙が零れた時、シャッター音がした。
後に現像された写真には、嬉し泣きしてしまう前に少し驚いた希美の表情が写っていた。