凛の光 [再び、春]

朝倉令  2006-05-09投稿
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春のぽかぽか陽気の中、明石健介は城崎凛に誘われて、ツーリングに出掛けるところであった。



「ところで、何で俺を誘ってくれたんスか?」


「え?、お友達の方から、明石さんは絶叫マシンがお好きとうかがったものですから……」



「マジ?…………」



健介は、その時点でイヤ〜な予感がしていたが、男らしく覚悟を決めた。



ドルン!ドルン!と重低音が腹に響く。



「これ、何CCなんスか?」

「え?、900CCよ」


「ウソ…」


ドルルル……クワァンッ!

クゥオオオォ――ッ!!


「うわああああぁーっ!」


いきなりカタパルトから飛び出すような爆烈加速に、健介は絶叫していた。






「はい、お疲れさま。コーヒーでもどうぞ。
ウフフッ、お友達の木島さん達って、実は大嘘つきなのね」


「ふぁ〜い… ろうもありあとれふ」



強烈な加速と耳をつんざく爆音に、健介は完全にグロッキー状態。


ろれつさえ怪しくなっていた。


実は、健介は遊園地のジェットコースターが『大の苦手』…なのである。






「大丈夫? そろそろ帰らないと真っ暗になってしまいますけど…」


「もう平気っスよ。
……ただ、帰り道は250キロ以下でたのんます」


「あら、叫んでいた割に良く見てるわね」


「いや、あれは……忘れてくれない?」


「まぁ、アハハハ‥」



健介の返事に、凛は爆笑していた。






「あの、今日はお付き合い頂きまして、ありがとうございます」


「いーえ、どう致しまして。 ……お陰で絶叫マシンが大得意になりそうだしね」


「あら、ウフフッ…でも男性に恥をかかせたお詫びは、私なりにさせて頂きましてよ?」


「へ?、どう言う…」


「何だかあなたって、とっても可愛いんですもの」



その時、夕焼けに伸びていた二つの影が重なった。






(…生きてて、良かった)


やわらかなくちびるの感触を味わいながら、明石健介は感動に包まれていた。






おわり



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