あれから、晃司の着信が何度もあったけど、私は電話に出なかった。
布団に潜って、一晩中泣いた。
いつの間にか朝になっていて、何も結論の出ないまま、私の中で小さな命が育っていく。
私は学校をさぼった。
何をすべきか…。
私は母親が仕事へ出掛けたのを見計らって、リビングの棚の引き出しから保険証と一万円を手に、病院へ向った。
朝の産婦人科には、定期検診を受けに来た妊婦や赤ちゃんを抱いた母親達が長椅子に腰掛けている。
明らかに場違いな私に、視線が送られる。
「清水さん、どうぞ〜。」
名前を呼ばれて、診察室に入ると、眼鏡の親父がカルテに目を向けていた。
「いつから生理ないの?」
「2ヵ月ぐらい…」
「そう。じゃあ診察するから、そこに下全部脱いで座って。」
看護士が私を変な椅子の方へ案内して、ズボンとパンツを脱いで籠の中に入れる様に促す。
何だか屈辱的な気分だ…。
椅子に座ると、腰辺りからカーテンを閉められ、足を広げられる。カチャカチャと金属音がして、冷たい感触がした。
診察は30秒ぐらいで終って、その後色んな検診をされた。
「妊娠してるね。」
眼鏡の親父は、まるで感情がない人形の様に無表情で言った。
「どうするかは、相手とよく考えて。後、君は未成年だから今度来る時は親御さんと来て。」
「あの…。もし、降ろすとしたら、費用はどのぐらいなんですか?」
「10万位いかな。どっちにしろ、保護者の許可なしには出来ないよ。」
もう、私一人ではどうする事も出来ない。
母親が帰ってきて、私は全てを話した。
黙って聞いていた母親が、急に私にビンタを食らわして、予想通りに金切声を上げる。
「何であんたは、いつも私を困らすの?そんなに私を困らせて楽しい?あんたもお父さんと同じね。」
何を言われても、私はもうどうでもいい。
早く終わらせてしまいたい。