慎―――と、静寂に包まれた教会。
凛―――と、いつもの場所に立つ彼。
彼の後ろ。一番前の長椅子には、小さな寝息をたてるアイサがいた。
不安や恐怖の色はもう無く、寒さを少しでも無くすためか、身じろぎしてはぼろの毛布をたぐり寄せている。
そこで、彼は謳った。
あの日と、同じ歌を。
―――神は貴方を愛すだろう。
神は私を嫌うだろう。
神は貴方を愛し、愛しきあまりに殺すだろう。
神は私を嫌い、嫌いなあまりに生かすだろう。
この世で死ほど愛される事はなく、生ほど嫌われる事などない―――\r
透き通るような、澄み渡るような、綺麗な声で。
あの朝と、同じ歌を。
―――神よ。
貴方を祈ろう。
貴方の為に、私の為に。
神よ。
貴方を讃えよう。
貴方の為に、あの子の為に。
神よ。
貴方を信じよう。
貴方の為に、世界の為に―――\r
そこまで謳うと、彼の歌声は余韻を残して白の世界へ溶けていった。
そして、彼は笑った。
心からの笑みを。
おひさまのようなやわらかさで。
―――――カミサマ。
愛してくれてありがとう――――
その刹那。
ブツリという音が
静寂を破壊した。