獏の特攻は全く意味をなさなかった。
その体当たりは洋介が形成した盾によってその力を殺されていた。
「なっ…なんだと!って気分か?全力を出そうが出すまいが結果はかわらねぇみたいだな」
(いかに九尾の力とはいえこうも易々と止められるはずは…)
「相手が悪かったな。爺さんの仇、取らせてもらうぜ!」
そう叫ぶと同時に再び盾を手甲と具足へ形成しそのまま獏へと一撃を叩き込む。
(ぐふっ…口惜しや…我がこのような輩に屈するとは…)
そう呟きながら倒れこむと口から白い霧のようなものが溢れてきた。
「なんだ?」
その霧状のものは次第に人のような姿へまとまっていく。
「流石ハ九尾トイッタトコロダネ…」
「誰だてめぇ!?」
そう叫びながら洋介は上段回し蹴りを繰り出したがただ空を切るだけだった。
「無駄ダヨ。君ノ技デハ僕ニハ当タラナイサ。ソコノ女ノサッキノ技モ当タラナイヨ」
「御託はいらない!質問に答えろ!」
「何者カ?何者デモナイヨ。ソモソモ僕ニ名前ナンテナイカラネ。好キニヨンデクレタマヘ」
(無駄じゃ洋介。)
「何だよ無駄って!?」
(そやつの正体は儂らも知らぬ。ただ儂らは゜彼の者゜と呼んでおる。)
「ソウダネ狐文チャン。相変ワラズ君ハ子供ノ姿ノママカイ?」
(ふん。気安く呼ばないで貰おう。゜彼の者゜よお主が獏から出て来たということは操っておったのか?)
「操ッタトハ人聞キ悪イネ。夢ヲ見テモラッテイタダケダヨ。夢ノ力ッテノモタイシタコトナカッタケドネ」
(それを操るというのじゃ!)
「オオッ、怖イ怖イ。君ノ妖術ナラ多少ハ僕ニ届カラネ。用事シナイト…」
そういいながら霧状のためか嘲笑っているのか体をゆらゆらと揺らしている。
「マァトリアエズ僕ノ用事モ終ワッタコトダシ帰ルトスルヨ。デハマタ…会ウ時マデ…。」
そういって゜彼の者゜は姿を消して静寂が訪れた。
「何だったんだよあいつは…」
(わからん。ただ数百年前の戦いの時に現れてきた奴じゃ。今のところ目立った動きもなくただ戦いを観戦するだけじゃったが…)
「ちっ…なんか喉に引っ掛かったままな感じだぜ…」
(しかたあるまい…とりあえずは結界を解くぞ。流石に疲れた。)
「ああ。わかったよ。お疲れさん。」
そうやって戦いは一先ずの終わりを見せた。