月に2回の練習会。
その日も いつものようにカラオケへ。
アツシ君がケツメイシの【さくら】を歌って みんなで盛り上がった。
竜二と私は 隅の方に並んで座った。
『今日 ダンナさん仕事か? 優しそうな人だよな。自分ばっか遊んでていいのか?』
「古いこと言うのねぇ。男は遊んでて良くて 主婦はダメなの?」
『そんな事じゃなくて、もし もしも 俺がオタクのダンナなら、一人で出かけてほしくないっつうか・・・おまえ危なっかしくて 見てられないんだよ!』
「じゃあ 竜二が私のSPになってョ。」
『バーカ!勝手に言ってろ!』
その夜 竜二は酔っていた。
それは知っていても、飛び上がりたいほど嬉しかった。
思えば 竜二と会ったあの日から、私は彼を好きになっていたのかもしれない。
そんな心を誰にも悟られないように、注意深く おし隠した。
それから 竜二はミスチルの【しるし】をヤケクソ気味に、熱唱した。
(ダーリン、ダーリン♪・・・)何を思って歌っているのか 悲しく響いた。
彼がなぜ 優しかったり、時に荒れたようになるのか 本当のところはわからない。
ただ一つわかっている事は、私の方がつらくて 切ないって事。
もう 恋なんて してはいけない私なのに・・・・
心に重たい鍵をかけておかなければ、どこかに飛んで行きそうな 私が座っていた。