「クク…合衆国海軍に嗅ぎつけられては厄介。素早く沈黙せしめ、奪取する。…クク…行け」
三隻のハイドン級巡洋艦がそれぞれ一本ずつ魚雷を放つ。沈めてしまうのは簡単だが、それでは頼まれていた兵器の奪還が不可能になり、何より敵が全員死んでしまう。おまけにその兵器というのは……
「殺すのは可愛がってからだ…クク」
傍らの士官が獣を見るような目で見ている。何を考えているのかわかったのだろう。
それでいい。私の趣味など常人には理解できない至高にあるのだ。
「WW隊!“ゼロ”5機。全魚雷迎撃されました!」
「内2機が〈トリガー〉と交戦中。残り3機が海中に潜った模様」
「クク…潜水艦の危険性を熟知しているな」
ド素人という訳ではないらしい。海戦に於いて海の下を野放しにする事は死を意味する。
「だが、誇り高き月軍には水陸両用WWがある事を忘れてもらっては困る」
今頃海中で“水陸両用WW”レインに遭遇しているであろう獲物の絶望を想像し、エンリコ・ラグンは一人悶えていた。
「幽霊艦隊は何者も逃さない。ステルスに加え、霧に紛れた我らは実体無き幻影、嘘、そして亡霊(ファントム)…クヒヒ……踊れ……」