開戦劈頭の一年間、ギャームリーグ機動部隊の挙げた戦果はそれまでの戦史の記録を事々く塗り替え、侵寇した中央域を舞台にパーフェクトゲームを演じ続けた。
これに対するフリースユニオン・宇宙解放連盟側は手も足も出ないままに恐怖と混乱のどん底に叩き落とされてしまった。
銀河元号一五二五年・第二期一0日(修正太陽暦四月一五日)、両軍機動部隊はワイマール恒星系付近で初めて大規模に激突したが、その結果はギャームリーグ三00隻の損失に較べ、フリースユニオンは実に二個艦隊・二六000隻が壊滅し、第一線級の兵員四四0万人が戦死と言う信じられない打撃を被った上、指揮に当たったコーノート中将始め多くの軍幹部が一日で犠牲になってしまった。
特にフリースユニオンに取って脅威だったのはギャームリーグ機動部隊の電撃集中作戦であった。
地球時代末期の二つの世紀をそれぞれ代表する大戦争で欧州を席巻した戦術を巧みに組み合わせ、ギャームリーグは宇宙時代に合わせて見事、進化させた上、自家薬籠中の物にしていたのだ。
その威力は凄まじく、決戦場や攻撃目標めがけて敵よりも早く・大量の艦船と火力を投入して圧倒するギャームリーグ側に、フリースユニオンは各所で惨敗を喫し続けた。
仮に負けた戦いでも、全滅しないだけまだしもマシだと称される位、フリースユニオン陣営の総崩れ振りは酷い物だった。
それが最も顕著に現れたのが、同年第三期六日(修正太陽暦六月一一日)に行われたヘクター要塞を巡る救援軍との攻防戦だった。
当初三個機動部隊・戦闘艦艇四八000隻を投入していたギャームリーグに対し、フリースユニオンは中央域諸国と連合を組み、数にして百倍する五00万隻(内戦闘艦艇六0万隻)の大艦隊を後詰として編成し、ギャームリーグ軍を殲滅しようと気勢を挙げた。
だが、事前にこの動きを察知したギャームリーグ側は、更に一個機動部隊を呼び寄せて、敵の集結宙域に待ち伏せを図り、敵が現れた端から集中砲火の餌食にした上、まだ数的には軽く七0倍はあった残存部隊を小惑星を改造した機雷源に追い込み、完全に包囲下に置いてその大半を撃沈してしまったのだ。
フリースユニオン側の損害は何と艦船四四八万隻・要員三三00万人に及び、《宇宙版カンナエ会戦》として、銀河中を震え上がらせた。