春樹は顔を曇らせながらも話を続けた。
「お義母さんは、ポリトフスキーをポリトと呼んで慕っていた。そしてポリトも我が子のように可愛がった…そんなポリトを父親はえらく気に入って、語学や学術に長けていたこともあって、お義母さんの家庭教師として家に住まわしたんだ」
「しかし、この時代は外国人…特に得体の知れない外国人を匿ったりしたら、村の人たちが黙ってなかったんじゃ…」
「お義母さんの父親は、村のほぼ全ての田畑を所有する大地主だったからね…意見できる者はいなかったろう」
祐輔はなるほどと思った。改築する前の、悠子と遊んだその家は、古かったけれど確かにお屋敷だった。
「それに、村人たちとも打ち解けていったみたいだよ…特に娘さんたちは、その美貌に夢中になったらしい」
「無理もないですね…」
「そうなんだが…」
春樹の顔が更に曇った。
「ポリトにいちばん夢中になったのは…お祖母さん、つまりお義母さんの母親だったんだ…」
「え?…まさか」
「あぁ…ポリトもそんな母親の気持ちを受け入れ惹かれていった…」
「でも…それってヤバいんじゃ?」
「そうなんだよ…やがて二人は密会を重ねるようになるんだが…そんなのが続くわけがない。父親の知る所となってね…」
「まさか…ポリトは殺された?」
春樹は首を横に振った。
「父親は確かに、恩を仇で返されたと逆上したが、流石に殺すことはできなかったんだ…それで仕方無く、洞窟の入口に木製の檻を造らせてポリトを幽閉してしまった…」
「そんな洞窟がこの村に在ったんですね…」
祐輔の言葉に、春樹は語るを止めて、祐輔の顔をじっと見つめた。