僕は撃たれていなかった。さっきの衝撃は白猫に押されたからだろう。
大丈夫?呼び掛けてみた。だけど、白猫が死んでいた。僕みたいに毛が真っ赤だった。血が固まれば僕とそっくりだろう。
(みんなは?)
他の猫は逃げてしまった。今ここにいるのは僕と死んだ白猫だけだった。
僕はバス亭に帰った。
だけど亜梨沙はまだ帰って来ていなかった。早かったかな?僕は待った。しかし、夕方になっても、夜になっても亜梨沙は帰って来なかった。
ただ、近くでパトカーのサイレンが聞こえた。
少しそっちに目をやると、亜梨沙がいるではないか。
警官に連れられ、パトカーに乗ろうとしていた。
(亜梨沙!)
亜梨沙はこっちを向いた。しかし、すぐ俯いてしまった。
(え・・・・。)
ただ、感じられたのは、亜梨沙に生気が全く感じられなかったこと。
「なになに?事件?」
「あの子が犯人だそうよ。」
「泥棒か何かですか?」
間もなく、たくさん人が集まってきた。
(亜梨沙!)
パトカーが走りだすと、同時に僕は飛び出した。
「あっ、あの猫あの子が連れてた・・・。」
一人が呟く
「危ない!!」
誰かがそう叫んだ瞬間、僕は赤い光に飲まれた。
ドンッ
僕は死んだ。
後ろから来ていたパトカーに跳ねられたらしい。
痛かった。そして悲しかった。
すぐ近くにいたのに、駆けていけば会えた距離だったのに・・・
ごめんね。どうして僕は人間じゃなかったんだろう?
どうして僕は人間の言葉が話せなかったんだろう。
すれ違うばかりの僕たちの運命は変わることは無かった。
終