半壊したアパートを俺達は急いで降り―\r
明らかにただ者ではない女性の手引きで俺は黒塗りの高級車の後部座席に転がり込んだ。
そして、車が走り出した途端―\r
グバアアアァァァァァン
『お、俺の部屋が―』
跡形もなく吹き飛んだ―\r
運転席にはサングラスをかけた車と同色のスーツ姿の男が一人。
俺を救った(?)女は助手席で周りに目を光らせている。
『あ、あのう―』
『私達は《MEMMA》よ』
『メンマ?』
『日本のラーメンホルダーを守るために創立された政府の機関だ』
運転手の男が手短に説明する。
だからなのか、車は信号も標識も無視してつっ走っていた。
『ラーメンホルダーって何ですか?』
『あなたがリュックに入れたカップラーメン、それを世界中の権力者や富豪が狙っているのよ』
そんなバカな―\r
たかがカップラーメンで?
『今やカップラーメンは貴重な戦略物資だ』
手際良くハンドルをさばきながら男が続けた。
『残り少ない小麦と独自の製造法が組み合わされた時―』
『世界を制する力になる』
女はそう締めくくった―\r
『で、俺はどうなるんです?』
俺は貧乏臭い心配を並べ立てた。
『帰る部屋は消えたし、明日のバイト予約入れちゃったし―』
『運が悪かったな』
男の答えはけんもほろろも良い所だった。
かれこれ30分も走っただろうか。
車はとあるマンションの前で止まり―\r
『さあ、降りて』
促されるままに俺はドアを開いた。
『ここがあなたの当面の棲みかよ』
10階位はあるだろうか?
見た目何のへんてつもない造りだが、今までのアパートよりはかなりマシな感じだ。
男はすぐに車を出し、俺と女はエレベーターに乗って、九階で降りた。
案内された部屋は2DKと言った所か。
家具や設備は一通り揃っているみたいで今からでも住める様になっていた。
だが―\r
『しばらくここで隠れてもらうわよ』
女の言葉は一種の軟禁を意味していた。