斉藤愛菜は内気な人間だ。そして昔、気味が悪いほど陰欝な人間だったという伝説がある。
「愛菜?どうしたの。」
七海が話しかける。
「ううん。・・・今なんか言われてなかった?私について。」
たまに愛菜は不安になる。
「別に?てかそんな不安にならないでよ〜!なんか嫌じゃん。」
「・・・・うん。」
愛菜は、昔いじめにあったせいか、周りの言葉をひとより敏感に感じ取っているのだ。
私、気にしすぎだよ・・・。大丈夫だよね?
キーンコーンカーーコーン
下校のチャイムが鳴り響いた。
「あ、そーだ。愛菜今日一人で帰ってくれない?ほんっとごめん!私部活だからさ!」
愛菜は一瞬戸惑った。だが、
「いいよ・・・。」
あっさりとOKしてしまった。
「じゃーねー♪」
愛菜はただ不安が大きくなるばかりだった。
一人で帰るのは久しぶりだった。
いつも七海と帰ってたからなぁ・・・。
「ねぇ、斉藤さ〜ん」
愛菜はギクッとして振り返る。
「斉藤さんさぁ、今日七海にうちらがいってた事チクってなかった?」
それは、愛菜を昔いじめていた女子のグループだった。
「い、言ってないよ?」
怖い。ただそれだけしか頭になかった。
「うぜーんだよ!死ね!」
「暗い奴が七海んとこにまとわりついてんじゃねー!」
「マジウザイし。キモいんだよ、バーカ!」
次々に恐ろしい言葉をあびせられ、愛菜は涙が出た。
「・・・・・!」
とたん、辺りが静かになった。
「愛菜ちゃん?大丈夫?」
そこには裕也がいた。
「・・・田口?」
「何うずくまってんの?あ、あいつらか。もう行ったから大丈夫だって。」
裕也の笑顔で涙が余計に溢れた。
「あ、泣くな!俺泣かしたみたいじゃん!」
ただ、温かい安心に、泣き続けるしかなかった。
私、一人じゃなかった・・・・。
そして、愛菜は裕也に恋をした。