男が死んだ後、村人達は山へ入る事を恐れた。
何故なら「生臭様」と言われる得体の知れない化け物がいるからだ。
それでも、飢えは容赦なく村人達に襲ってくる。
そこで仕方なく、村の男集が集まり、山へ食料を採りに行く事になった。
腰に鉄砲やナタを携えて、万全の装備で山へ入る。
しばらく歩くと、一匹の兎が目の前に現れた。
男達はすかさず、鉄砲で兎を捕らえた。
「よし、もっと奥へ入ってみよう。」
始めて獣を捕らえた喜びで、男達は気を良くしてズカズカと山奥へ入って行く。
そこでは、狸や猪や鳥が面白い様に捕れる。
男達は夢中で獣を追った。
気付けば、日はとっくに暮れていて、随分山奥へ入って来てしまっていた。
「これから、村へ降りるのは危ない。今日は山の中で一晩過ごそう。」
男達は、大きな杉の木の下に身を寄せ合った。
「あ〜。一日中狩りして、腹が減ったなぁ。」
一人の男が言った。
他の男達も同じだった。
男達の目の前には、さっき捕った獲物がある。
「兎一匹ぐらい、いいだろう。」
男達は肉を口にした事がなかったので、この兎をどうさばけばいいか分らなかったが、どうにか毛を毟り取り、内臓をえぐり、肉を切り取った。
すると一人の男が言った。
「何か、桂三(殺された男)みたいだなぁ。」
あの光景が蘇り、食欲が失せる。 が、せっかく捕った食べ物を粗末にする訳にもいかず男達は、生肉を貪り食った。
始めて食べる肉は、生臭くて血の味がする。しかし、食べなれると癖になる味で、男達は夢中で食った。
夢中で食ううちに、今日捕った獲物を全部食ってしまった。
腹一杯になった男達は、知らないうちに寝てしまっていた。
ガサガサッ ガサッ ガサガサ
男達の周りを何者かが歩く音がする。男集の一人が音に気付き、薄目で様子を伺う。
暗闇の中で、月明りに照されて小さな子供の様な影が5・6体見えた。
「生臭様だっ!!!」
男がそう思った次の瞬間、小さな影が隣りに寝ている男に飛び掛かった。
バリッ グシュッ クチャクチャ
「うっう〜〜〜」
嫌な音と隣りの男の呻く声が響く。
その音に他の男達も飛び起きて、それぞれに鉄砲を手にした。