蜘蛛の子を散した様に、その影は逃げて行った。
男達はブルブルと震えながら、火を起して、横たわる男を照した。
「うっ」
男は無残にも、腹をかっさばかれて、生き絶えていた。
「生臭様だ。やっぱり山へ来るんじゃなかった…。」
男達は得体の知れない化け物を恐れ、今すぐに山を降りる事にした。
暗い山道を歩く。
カサッと木の葉が揺れる度にビクッと体が固った。
やっとの思いで、村まで降りた。「山上村」立て木に書かれた文字に男達はホッと胸を撫で降ろした。
しかし、村の様子がおかしい。男達は、嫌な予感に襲われた。
恐る恐る、近くの家の様子を伺う。
家の中は真っ暗で何も見えないが、目が慣れてくると小さな影が一つ揺れているのが見えた。
まさか…。
男は戸を勢いよく開けた。
ギィャ〜〜〜〜〜
悲鳴の様な声を上げて、それは飛び掛かってきた。
男達は一斉にそれを押さえ付けた。それで初めて、それの姿をハッキリと見た。
人間より一回り小さい、少し褐色の肌色をした人間。
顔は猿と人間の中間の様な。
「お前は何者だ!!!何故俺等を襲う?」
男がそれに言うと、それは少しなまりの入った片言の言葉で
「オラ達ノ村、食べ物ナイ。肉バ喰ウナイワレデモ、腹減ッタ。ダカラ、肉バ食ウ。オマイラ、生物デネェ。人間ノ肉食っテイイ。」
男達が周りを見ると、いつの間にか"ソレ\"が何匹も男達を囲んでいた。
「肉バ食ウ!!!!」
村の神社に奉られた村の掟の本にはこう書かれていた。
生神村の掟…
飢えが襲おうが、生物の肉は決して食うべからず。
そう、これは違う村の掟。
昔、奇形児やら障害のある子を隠す為に、作った村の掟。
こうして、山上村には誰もいなくなった。
掟とは、時として悲劇を産む要因になるのかも知れない…。
今この村があった所は、更地にされ、ただの林になった。そこに小さな祠が奉ってある。
心霊スポットとして若者が夜な夜な集まって来るが、この悲劇を詳しく知っている者は数少ないだろう。
何故なら、この伝説にはこんな掟があるから…
この話しを、聞くべからず.話すべからず。破りし者は村の呪いが降懸かるだろう。