ギャームリーグ《新銀河軍事同盟》陣営の優勢は翌銀河元号一五二六年に入っても続いた。
特に彼等の機動部隊が太陽系に城下の盟を誓わせた同年新年期三日(修正太陽暦一月三日)の時点で、中央域の半分に当たる・二八六の星系国家・六三000の人工植民体や船団勢力が制圧され、二七0億もの星民と、GDP全宇宙比に換算して実に二六%に匹敵する経済・生産力がギャームリーグの掌中に収められていた。
作戦の九0%を達成したギャームリーグ大司令部は、当初の予定通り長期持久戦略に移行しようとしていた。
新たに支配下に置いた中央域の人的資源や生産力を一早く戦争遂行の為に組織化して、フリースユニオン側が絶対勝てない体勢を構築して、現在得た均衡を既成事実として認めさせる。
これが大司令部の描いた《第二段作戦》の全貌だった。
だが、大司令内上層始めギャームリーグ政財界や官僚は概ねこのプランを支持していたが、軍幹部、特に戦勝に酔う前線部隊や野心的な若手政治家達はこの方針に不満で、更なる戦果の拡大を求めて激しく突き上げ始めていた。
又、一部の文化人や知識人、邦内ネットの中でもこの時盛んに《一つの宇宙》論が唱えられ出していたのだ。
端的に言えば、今や名実共に銀河最強となったギャームリーグ機動部隊の力を背景に、人類宇宙を統一してしまえ。
偉大なる統一国家を建設し、長年に渡る衰退から宇宙文明を再興し、新たなる時代を切り開くべきである―この壮大な理想主義は敵味方問わず大勢の人々の心を捉えたのは確かだった。
銀河元号一五二六年第一期三0日(修正太陽暦二月五日)、全能感とヒロイズムにどっぷりと漬かったギャームリーグ機動部隊に、とある報告が舞い込んだ。
フリースユニオンと中央域諸国が連合して結成された宇宙解放連盟が、打ち続く敗戦を食い止めるべく残された戦力の全てを結集、乾坤一擲の大決戦で戦局を挽回しようともくろんでいるとの内容だった。
これを知ってギャームリーグの提督達はせせら笑った―脱走者だけで全軍の一割に迫る弱兵共に何が出来る!
ここでギャームリーグ内で激しい対立が起きた。
飽くまでも長期持久体勢でじわじわと勝ちに持ち込むべきとする大司令部と、解体寸前の敵の軍事力を今すぐ全滅させ、このまま完全勝利を目指して譲らない短期決戦派―前線指揮官達とである。