七海はよく裕也と話している事がある。それを、愛菜は羨ましいと思っていた。
「ねぇ、七海さあ好きな人いるの?」
「別に。なんでそんな事聞くの?」
そんなふうに問い詰められると、無口な愛菜は困ってしまった。
「え・・・なんか、田口となかいいから・・・好きなのかなって?」
「そんなわけないじゃん。仲いいだけだって。」
愛菜は、そんな七海を憎く思った。
「あっ、もしかして愛菜、田口の事好きなんだ!」
周りの生徒に聞こえるよう声で言われ、愛菜は泣きたくなった。
「七海・・・・。」
愛菜は怒りたくなったけれど、気持ちをおさえた。
「何?」
相変わらず七海はあっけらかんとしている。そんな七海に愛菜は腹がたち、
「・・・ひどい。」
生徒達をかきわけ、廊下を走って行った。
走るたびに、
「斉藤って田口のこと好きらしいよ。」
「マジで〜?ありえね〜つりあうわけないし。」
笑い声が混じった悪口が耳に入ってきた。
ひどい・・・
次の日、愛菜は教室に入るのが憂鬱だった。
学校だけにはいかなきゃ・・・
「おはよ・・・」
途端に、賑やかだった教室は静まりかえった。
なに?
愛菜は今から始まる恐ろしい事が分かった。