あの、あ、随分お困りのようで、ですね、できらば、が、お力になりたいのは山々なんです。はい。でもですね、いきなりかくまってくれと言われても、あの、見ての通り自分は屋台の金魚売りなんです。だから、その、具体的にどう力になっていいのか。
俺はしどろもどろになりながらも、ま、状況からすれば当然とも言える言葉をもごもごと吐いた。正面から見る彼女は、なんつーかバカみたいに美人だった。心臓が暴れてアルコールが血管を走り出したのがわかる。
少し眉間にしわを寄せて考える素振りを見せた彼女は、二人の間に横たわる巨大な棺桶のような水槽を指さした。
これ、この水槽、これ少し貸して。今すぐに。汚さないし、金魚も大事にするし、もう迷惑とか絶対かけない。あの神輿が通り過ぎるまででいいっす、たのんます。一瞬だけ貸して。お願い、頼む、祈る。なんなら祝う。
俺は拝まれていた。