「やめて・・・やめてよ・・・」
いつものように、校舎裏に響く叫び声。
そこをなんてことないように七海は通りすぎた。
いつもの事だよ。私には関係ない。
叫び声の主は、七海の元親友、斉藤愛菜だった。
校舎裏でクラスの女子にパシリやら金を取られるやらしているらしかった。
「あ〜あ、お腹空いたなぁー?」
一人の女子が呟く。
「斉藤さん、お金貸して?いいよね?うちらシンユウなんだから。」
とうとういじめがはじまってしまったのだ。
いまや愛菜には味方がいない。親友の七海や田口は離れて行った。
「う、うぅ・・・。」
か細い声と、罵声が七海の耳に入る。
あーあ、愛菜と別れてよかった・・・。あたしまでいじめられるとこだった。
「貸せっていってんだろ!!」
「ぐ・・・っ!」
頭を殴るような、鈍い音がする。どうやら愛菜は女子達に暴力を振るわれていれらしい。
その現場を七海はしばらく見ていることにした。
「痛い!やめて!!!」
「お前がとろいからだろ!バーカ!!」
段々と、苦しくなる愛菜の声。それが面白くてしかたなかった。
(愛菜変な顔〜!ばっかみたい。あんなパンチ避けろよ〜)
七海は笑いを堪えるのに必死だった。
しかし、愛菜は苦しくて、今にも死にそうだった。
それを笑いながらみている皆が、憎くて、酷くて、呪いたかった。
愛菜の憎しみが、今爆発しようとしていた。