静かになった理科室の中、愛菜は一人立ち尽くしていた。
どうしよ・・・
私、刑務所に入らなきゃダメだよね・・・やだ・・・
恐ろしさと不安が膨れ上がるばかりで、愛菜はパニックになっていた。
ギィ・・・
「!!」
誰かが理科室の扉を開けた。
見覚えのある長い髪が見えた。
「何これ!うぅ・・・っ臭い!」
七海だった。生臭さに耐え切れなくなり、鼻を塞いでいる。
「七海・・・!」
愛菜は自分の犯した罪を友人に見られ、泣きたくなった。
「愛菜・・・!まさかコレあんたがしたの!?」
七海は廊下に向かおうとした。恐らく教師に報告しに行くのだろう。
「やめて!」
愛菜は走った。視界が階段に変わった。
「・・・きゃあぁっ!」
ズダダダダダッ
階段から落ちたらしい。体が所々痛む。
そして、横には七海が倒れていた。
「七海・・・!」
七海は動かない。腕は変な方向に曲がり、目からは血を流していた。
「うわ・・・!」
田口がいた。田口は、返り血で赤く染まった愛菜の制服を見て後ずさった。
「違う・・・!私、階段から落ちて・・・」
「来るな・・・!」
田口は愛菜の手を振り払った。
廊下には静寂しかなかった。そして、悲しみ。
愛菜は俯いて、話し始めた。
「田口、私が田口の事好きだったの知ってた?」
「え・・・?」
愛菜は、お伽話を聞かせるかのように、田口に話しかける。
そして、悲しい表情に変わった。
「・・・でも、田口に嫌われたら意味ないね。」
愛菜は素早くポケットからビーカーの破片を取り出し、首筋にあて、引いた。
「やめろ!」
愛菜の首筋から、鮮血が吹き出した。
「田口も皆も、大好き。」
首を切ったのにも関わらず、愛菜は喋っていた。
その表情は、哀しく微笑んでいた。
廊下には、愛菜の血の海ができていた。
終