「・・・・。」
田口裕也は、血の海と化した廊下で、一人立ち尽くしていた。
コレ、どうしよう・・・。
コツ、コツ、コツ、
向こうの廊下から生徒が歩いて来た。
「あ、おい!、ちょっとそこの人、来て!」
裕也の事にきずくと、生徒は走って向かって来た。
「どうしたんですか?」
肩までの髪をゆらしながら走って来た。その生徒は、後輩の橋本麻里奈だった。
こいつは、家庭内で暴力にあっていて、自殺しようとしたという。この高校では有名だ。
「橋本、斉藤が自分で首を切って・・・。それで渡邉は階段から落ちて・・・。」
しかし、橋本は死体を見ても、表情一つ変えず平気な様子で、脈をはかっている。
「先輩、二人とも死んでますよ?」
きっぱりとそう判断され、裕也は腹が立った。しかし、不安の方が大きかった。
「死体、どうすれば・・・。」
橋本は、裕也の困った顔を見てから、下を向いた。
「じゃあ、私が処理しましょう。」
「な、処理・・・?」
高校生が言い出すとは思えない言葉だった。
「・・・本気か?」
橋本は無言で頷く、そして続けた。
「先輩、これが自分の罪になると思って怖いんですよね?」
図星、悔しい。まさか橋本、俺の心が読めているのか?恐ろしい。
「どうします?」
裕也は決心した。
「頼む・・・。」
それを聞くと、橋本は立ち上がり、
「じゃあ死体を運びましょうか。」
と、言った。
もう、裕也の心からは、「罪悪感」というモノは消えていた。