「アキ!どこ!?いるんでしょ!?」
整備員たちがドックで待機している為、誰もいない格納庫で美樹の声は響いた。
「アキ……どこ……?」
次第に心細くなってきた。誰もいない格納庫は一人でいるには広すぎる。
物陰も多く、薄暗い。
もう引き上げようか。
避難区画にいるに違いない。
勝手に判断して回れ右をする。
と、かすかな物音に身体が強ばる。
この静かな世界に何がいる。
唸り声のような、あえぎ声のような。
ただミサイルの影に誰かがいるのは間違いなかった。
「誰…?」
身構えながらそっと声をかけた。
返事はない。
「アキ?」
「ぅう……ッ」
果たして、そこにいたのはアキだった。
「アキ?どうしたのよ!」
顔に汗をかき、苦しそうに悶え、アキは涙を流していた。
「どうしたの、真っ赤!」
「わかんない…苦しくて、悲しくて…なんか涙が出てきた」
アキはやっと絞りだした。
「悲しい?なんで?」
「…わかんない…暗くなって…赤くなって…怖かった」
震えていたアキは、しかし、最後に笑顔で言った。
「でも…最後は蒼かった。暖かくて……気持ち良かったよ」