「祐輔くん?…まさか、祠の中に遺体が有ると言うのか…」
「違います…春樹さん、この祠退かすの手伝ってください」
祐輔は、洞窟の突き当たりに建てられた、小さな祠の屋根の辺りに手をかざしたと思ったら、いきなり祠を動かし始めた。
「祐輔くん!この祠はポリトの霊を鎮めるために必要なんだ…止めなさい!」
「だから…彼を鎮めるためには、祠が邪魔なんです」
「何か分かったのか…」
春樹は半信半疑で祠の元へ歩み寄り、祐輔と祠を担いで隅へ置いた。
「なんだ…これは」
春樹は驚いた。祠に隠れて気付かなかったが、その裏の岩の裂け目には、こぶし大から小さいのまで、いろいろな大きさの石がぎっしり詰まっていた。
「やはりな…」
祐輔が石の詰まった隙間に手を当てると、冷たい空気の流れが感じ取れた。
「ポリトフスキーの亡骸は…おそらくこの奥です」
祐輔は詰まった石のひとつひとつを手で取り除き始めた。それを見ていた春樹も一緒になって手伝い、ようやく全て取り除くと、大人が横になって進める程の岩の通り道が現われた。
二人は顔を見合わせた後、何も言わずに祐輔が先頭になって蟹歩きで進んでいった。
祐輔に少し遅れて春樹が岩の裂け目を抜けると、祐輔が突っ立っていて、その足下には白骨死体が俯せに横たわっていた。
「やはり居たのか…」
「そうみたいですね…春樹さん、見てください」
祐輔に促されてよく見ると、その白骨死体は軍服を着ていて、右手の側には拳銃が転がっていた。
「自殺?…」
「ですね…そこに風呂敷が有る。菊枝さんに、何が入ってるかは言わずに持って来させたんじゃないかな」
「そして軍服に着替え、その中に忍ばせてあった拳銃で…何?!」
祐輔と話しながら、何気にその風呂敷を照らした春樹は言葉を詰まらせた。
「い…一週間の歌だ…一週間の歌だよ、祐輔くん!」
「えッ!」
祐輔は春樹の元へと駆け寄った。
すると、春樹の照らす風呂敷一面に浮かび上がっていた。
血文字で書かれた、祐輔の思い出せなかった一週間の歌が…。