狐につままれた様な顔をして女の子に先導されている男は周りから見てさぞかし滑稽に映ったであろう。
「ここのパフェ美味しいんだよ!ねぇ、ねぇ、一緒に食べよ!!ねっ!!」
「う、うん」
男は女の子の勢いに戸惑いながらも女の子のペースについていった。
普通であれば初対面の女の子にここまで馴れ馴れしくされれば少しは動揺してもいいくらいだが男は不思議と居心地がよかった。
まるで5年以上は付き合っているかの様な居心地の良さであった。
その後も男はその女の子といろいろな所を回り、あっという間に時は過ぎていった。
気付けば辺りは暗くなっており、人もまばらになっていた。
男は近くのベンチに女の子を誘い2人して腰掛けた。
「あ、もう7時だ。帰らなきゃ…。」
「えっ、なんで!?」
「え、だって明日仕事だし…。」
「あ、そうなんだ…」
「今日はありがと!楽しかったよ!」
男は無邪気に微笑むその清楚な笑顔に、どうしようもない感情が込み上げてきて、男は無意識のうちに両手を女の子の肩にかけ抱きしめていた。
「本当にありがと…」
その瞬間男の目の前は真っ暗になり、さっきまで腕の中に感じていた温もりも消え去っていた。
しかし男の心の中は晴れやかであった。
また会える。
そんな気がしたからであった。
そして男はまた落ち続けていた。完璧な闇と共に…。