『奈央ちゃんは、こんな遅くに外出して、家のヒトに怒られない?!』
車を運転している新谷先輩は、助手席のあたしに気を遣ってくれた。
『はい。大丈夫です。』
本当は、お母さんには秘密なんだけど‥‥。
お母さんが帰って来る前に帰れば大丈夫よね‥‥。
『先輩、コイツん家、親がキビシイから今日は、早めに帰りたいんですけど‥‥いいすか?!』
後部座席から、聖人が言った。
その優しさに―\r
また胸がキュンとなる―\r
『ハハハ。まだ新〇に着く前に帰る話かよ。
分かってるよ聖人。俺らも明日は仕事だしよ。』
『すみません!!あたしに気を遣って頂いて。』
思わず謝ってしまった。
そうだよね。
だって、聖人があたしの為に先輩に、車に乗せてくださいって頼んでくれたんだもん。
やっぱり悪いと思うし。
『お前達見てると、青春時代を思い出すな。
何も考えずに、ただ仲間と連んで、はしゃいでた‥‥あの瞬間が一番楽しかった、あの頃を。』
新谷先輩は、髪をオールバックにしていて、サングラスをしている。
それ故、助手席のあたしから見ても、あまり表情が分からなかった。
けれど、少しの憂いを秘めた、その口元から、顎のラインは、大人の男性の魅力を感じた。
『奈央。新谷先輩と大沢先輩は、巷じゃすげぇ有名な走り屋で通ってたんだぜ。』
後ろの席から聖人が言った。