「酷いな、これは…」
ラトは腐食が始まっている遺体がそこかしこに散乱しているのを見て、顔をしかめた。
「昨日は一日中雨が降っていましたから。湿気と高温で腐食が始まっているのでしょう」
ロザラムは表情を変えずに、淡々と説明した。
「そうか…許せんな…」
幼子を抱えて死んでいる母子を見て、ラトは声を震わせた。
「よし、生存者の確認作業に入るぞ!」
ロザラムそれを見ても眉一つ動かさず、周りにいる騎士達に呼び掛けて、確認作業に入った。
「…」
その様子を見ていたラトは、
冷静なのか…それとも冷徹なのか?―\r
と、ロザラムに対する見方をどうすべきか判断がつかなかった。
調査チームとして編成された騎士達は暑い陽射しが照りつける中、汗を拭って、瓦礫を取り除きながら、生存者の確認作業に当たった。
その間、ラトは剣を瓦礫に当て、残留リムスの特定を行っていた。
リムスとは、ソードメーカーの力の度合いを表す単位の事で、おおよそ十リムスが平均的なソードメーカーの力となっている。
一日経っても残留リムスが四十を越えている…何という力だ…―\r
ラトはごくりと唾を飲んで、震える剣の切っ先を何とか鎮めながら、調査を続けた。