「お前、一体何者なんだよ!」
裕也は怒鳴ってみた。
それは奴の正体を突き止めるためにしたことだった。
「私はただの人間ですよ。」
橋本はそう言った。
腹が立った。
怒鳴られたにも関わらず、平然とする目の前の殺人者に。
「お前ぇっ!うわっ!」
裕也の叫びと、紙のバサッという音が重なった。
橋本がいきなり新聞の記事を差し出したのだ。
「何・・・・?」
橋本は、目で、「読め」と言っていた。
とりあえず、裕也はその記事を読んでみた。
<●月×日、夜、外食に行ってくるといい、出掛けた夫婦、夫橋本匠さん(48)婦橋本明江さん(42)が出掛けたっきり、戻って来ないとの、橋本さん夫婦の娘さんから、通報があった。二人は・・・>
まだ続きがあったが、読みたくなかった。
「橋本・・・」
新聞には、橋本の両親の写真が写っていた。
「私が殺したのはこの二人です。」
殺した!?記事には行方不明って・・・
そういおうとしたが、橋本がさえぎった。
「私が嘘をついた。行方不明って。」
「でもお前、両親から暴力受けてたって・・・!」
橋本は悲しい目で言った。
「明日、全部話します。」
橋本?
いつの間にか、橋本の部屋から裕也は出ていた。
本当は私は・・・、いてはいけないんです。生き物じゃないから。
扉越しに、橋本の声が聞こえた。