「自殺…でしょ?さっきマンションの前に居た野次馬の人に聞いたの」
「あ…そうなんだ」
「私の勤めてる病院でもね、おとつい患者さんが屋上から自殺したの。だからあまり触れたくなくて。」
「そっか…。」
孝也は恵美の嫌がる事はしたくないと思う反面、警察と第一発見者の孝也しか知らないあの奇妙な死体の事を話したくて仕方がなかった。
「恵美…、実は俺、第一発見者…、なんだよね。ていうか…、目の前に落ちてきたんだ…。」
「え………、そうなの?」
恵美はどういう顔をしたらいいのか分からないといった様子だった。
「それでさ、その落ちてきた人さ、もう関節が全部壊れちゃっててさ、血もはいてるし、もう人間じゃないみたいでさ…」
「うん…」
「でさ…、その人……、笑ってたんだ…。」
「えっ……?」
「笑ってたんだ…。というより…、微笑んでた…。」
「………、私…、も…。」
「えっ?」
「いや…、私の病院で自殺した患者さんも…、笑ってたんだって……。」
孝也は何故かマンションの屋上から自殺した男が最期に何を見たのか急に確かめたくなった。
「屋上へ行こう…」