俺は走ってヒロって奴を助けようとしたんだ。
カッコイイ話なら助けて颯爽と消えていくスーパーマンのように…
…なるわけがない↓↓
入り口のドアノブで火傷をして、さらに服にちょっと引火。慌てて脱いで助け遅れる始末。頼りないスーパーマン。
ふと上を見上げると人影が見えた。
『ヒロ!』
俺は大声で叫んだ
「何」
『え??とりあえず飛び降りろよ』
「え?無理だよぉ」
『支えてやるから』
まぁこんなやりとりをして俺は屋根にいたヒロを救出した。
ヒロを両腕で抱えて親のところまで連れていった。
ヒロの親は何度も俺にありがとうと言ってくれたが俺は特に何もしていない、火傷をした揚げ句、服を燃やしただけだった。
あ、それと勘違いが一つ。ヒロが女の子だったって事。しかも岡村さん家のヒロ。千尋↓↓
「ちょっとぉ、恥ずかしいんだけど」
千尋はお姫様抱っこ状態が継続していた為、頬を赤らめていた。
『あ?あぁ、わりぃわりぃ』
俺は千尋を下ろした。家はどんどん燃えていく。火で焦げて褐色になっていく白い壁。あの家の中には岡村千尋にとって思い出のある場所だったんだなと思い同情してしまう俺がいて、隣には俺と同じ考えをしてるような顔つきと遠い目で焼けてく家を見つめる岡村千尋の姿があった。
岡村に話し掛ける言葉は何もなかった。俺は家に帰ろうとした時に松尾さんがやってきて千尋と千尋の母親に何か話し掛けていた。
俺はその様子をチラッと見ただけでそのまま帰宅した。
煙の臭いが体に染み付いていたからシャワーを浴びようと蛇口を捻る。
『痛っ!!』
火傷した後の痛みを水が反応していた。岡村千尋の心の痛みが沸々と感じてすぐに切なさに変わる。これが(苦み)だという事を始めて知った瞬間だった。
風呂から上がると松尾さんが帰って来ていた。テーブルに座って誰かと話している、
『松尾さん、おかえり』
「ただいま。ちょっと大事な話してるから部屋に行っててくれないか?」
わかったとだけ答えて俺は部屋に戻った。薄暗い通路を歩き部屋に向かう。俺の部屋らしき場所から光がドアの隙間を通り、廊下と壁に差し込んでいる。
電気でも消し忘れたかな?と思いながらドアを開けた。
一瞬にして目と目が合う。
俺は少し呆然とした後ようやく口が開く事ができた。
『お、岡村、何してんの?』