結奈の啜り泣く声を黙って聞いていた龍雅はやがて近くのパイプ椅子に腰掛けた。
龍雅「まさかこんな事態になるとは…俺としたことが…」
結奈は相変わらず窓の外をベッドに伏せながら眺めていた。
結奈「隆也は何かされたの?あの様子…」
龍雅は目を細めた。
龍雅「強制細胞変化…ほぼ間違いない…」
龍雅は一呼吸置いた。
龍雅「そもそも人間は皆潜在能力というものが備わっている。簡単に言うと人間の遺伝子の染色体に影響する部分に予め用意されたコンピュータープログラムを送り込む」
龍雅は起立し窓際に足を運んだ。
龍雅「そのプログラムってのは人間の進化を強制的に促進させる…。そして元々ある潜在能力をそれが普通になるレベルにまで引き上げる。さらにそこから人間そのものの限界をさらに高い次元へと伸ばしていく…。それが強制細胞変化の本来の意義だ。…しかし…」
龍雅は結奈の方を向いた。
龍雅「世界統治機構はこの仕組みを人類の人類に対する高慢だとして破棄すると表明し、表面上は破棄された。なぜなら人類は数世紀に渡って行われたこの研究の過程で沢山の失敗作を生み出した。この地上に存在する怪物、グルドもまた犠牲となった動物の成れの果てなんだ…」
結奈は急に跳び起きた。
結奈「じゃ…じゃあ隆也はどうなるの?グルドになるの?直す方法くらいあるよね?」
龍雅は顔をしかめた。
龍雅「残念だが強制細胞変化を施されたものが社会復帰した例など聞いたことがない…。だが人間がグルドになる可能性はほぼ0だ…。そう、ほぼな…」
龍雅は記憶の中にその例外を見出だしていた。